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【弁護士監修】個人再生とは?デメリットと流れ、認可・不認可となるケースは?

個人再生法について

任意売却を考える際に、任意売却と個人再生のどちらを選ぶべきなのかと迷う方は少なくありません。
任意売却をすると自宅を失ってしまうことが多く、任意売却したとしても残債があれば、自己破産や個人再生へと進むケースもあります。それならば、任意売却をせずに個人再生をすれば、任意売却のように自宅を失うことはないし、債務を大幅に圧縮できるのだから任意売却よりも個人再生の方がよいのではないかと思うかもしれません。
任意売却よりも個人再生の方がいいのでしょうか。

個人再生法とは、民事再生法の規定に従って、債務者の返済負担の圧縮と返済計画の立案とを支援する手続きのことをいいます。個人再生法という法律があるのではなく、民事再生法13章「小規模個人再生及び給与所得者等再生に関する特則」で規定されている特則ということになります。
この民事再生法第13章第1節第221条にこうあります。

「個人である債務者のうち、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあり、かつ、再生債権の総額(住宅資金貸付債権の額、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額及び再生手続開始前の罰金等の額を除く。)が五千万円を超えないものは、この節に規定する特則の適用を受ける再生手続(以下「小規模個人再生」という。)を行うことを求めることができる。」

簡単に言ってしまうと、収人がある人で、住宅ローン以外の債務が5,000万円以下であれば、個人再生手続きをすることができるということになります。
個人再生のメリットを簡単にまとめますと、裁判所により15000万円以下の債務なら5分の1に減額してもらうことができ、それを原則3年で完済することを約束します。
任意売却や自己破産とは違い、一定の条件を満たせば、自宅や車などを失うことはありません。

個人再生手続きが開始されれば、債権者は、給料差押えなどの強制執行ができなくなります。
自己破産の場合、借金をした理由がパチンコや競馬のようなギャンブルであったり、ブランド品を大量に購入したなどであると自己破産が認められないこともありますが、個人再生の場合は、借金の理由を問われることはありません。

また、自己破産の場合、一定期間、就くことのできない職業などの制限があります。たとえば、株式会社の取締役、保険代理店、警備員、税理士、弁護士などがそうなのですが、個人再生の場合はこのような資格制限がありません。

個人再生は2種類

個人再生は、さきほどの条文にありました「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2つに分かれています。

小規模個人再生とは

小規模個人再生とは、主に自営業者や一次産業者などを対象にしていて、給与所得者等再生とは、自営業者以外の会社員などを対象にしています。
小規模個人再生の特徴は、債権者の過半数が再生計画に反対しなければ、最低弁済額だけを支払えばいいという点です。

給与所得者等再生とは

給与所得者等再生の特徴は、再生計画について債権者は異議申立てができないということと、支払う金額が最低弁済額か可処分所得の2年分のどちらか多い方という点です。
そして、自営業者等は、必ず小規模個人再生を選択することになるのですが、会社員等は、どちらを選択してもよいということになっています。
最低弁済額とは、住宅ローンを除いた5,000万円以下の債務額に金額によって基準額が規定されています。

最低弁済基準額

個人再生をした人が最低限支払わなければいけない金額です。

最低弁済基準額は、住宅ローン残債を除外した借金総額(基準債権総額)から計算が可能です。

住宅ローン残債を除外した借金総額(基準債権総額) 最低弁済基準額
100万円未満 債務全額
100万円以上500万円未満 100万円
500万円以上1500万円未満 債務額の5分の1
1500万円以上3000万円未満 300万円
3000万円以上5000万円以下 債務額の10分の1

個人再生では、一定の条件を満たせば、住宅を残すことができますが、この場合、住宅ローンの減額は一切認められず、個人再生中であっても、毎月の支払額の変更が出来ても出来ても、約定の支払い総額を変更することは出来ません。

個人再生の流れ

個人再生手続きの流れについてご説明いたします。
なお、裁判所によって手続きの流れが異なる場合もありますので、ご注意ください。
個人再生を申し立てる人は、これらの手続きを自分の努力により、かつ裁判所が定めた機関内に行うことが必要です。それができなければ、手続きが終了してしまうこともあります。

1.弁護士による個人再生の無料相談

個人再生に限らず、任意売却などに関しても、弁護士等による無料相談が行なわれています。電話やメールなどで相談し、その後、直接面談を行ない、詳しい内容をご相談いただきます。

2.個人再生の受任

相談の結果、個人再生を弁護士に依頼するということになれば、弁護士との間に委任契約を結び、正式に受任となります。
裁判所によっては、個人再生の申立ては原則として弁護士を代理人として想定していることもありますし、裁判所に納める手続費用も、代理人弁護士がいる場合といない場合とで、差がある裁判所もあります。

3.受任通知発送・取引履歴の開示請求

委任契約後、すみやかに債権者に対して受任通知(介入通知)を送付します。これにより債権者からの直接の取り立てが停止されます。
同時に、債権の金額や内容などの届け出を請求し、貸金業者には取引履歴の開示請求を行ないます。

4.債権調査・引き直し計算

債権者からの債権届をもとに債権調査を行ないます。
貸金業者が開示した取引履歴をもとに引き直し計算を行ない、利息制限法に則った債務額を算出します。過払い請求を行なう場合もあります。

5.申立書の作成

債権調査や引き直し計算により、個人再生手続きを行なうことになれば、申立書を作成します。申立書、陳述書、債権者一覧表などを作成し、源泉徴収票、給与明細、財産目録、住民票などを添付する場合もあります。

6.個人再生の申立て

住所地を管轄する地方裁判所に申立書を提出し、個人再生の申立てを行ないます。

7.審尋手続

裁判官による審尋(面接)が行なわれます。個人再生委員による面接だけの場合があります。

8.開始決定

審尋の内容に問題がなければ、再生手続開始が決定されます。

9.個人再生委員の選任・打ち合わせ

裁判所によって異なりますが、個人再生委員が選任される場合があります。その場合、委員との打ち合わせも行なわれます。
個人再生委員には15万~30万円程度の報酬を支払わなければいけません。

10.債権届出期間

各債権者が債権の届出を行ないます。
債権額の確認をするため、数週間の期間を要します。

11.再生計画案の作成

再生計画案を作成します。
作成した計画案に対し、書面決議、意見聴取が行なわれます。
給与所得者等再生の場合、書面決議はありません。

12.再生計画案認可

計画案に問題がなければ認可され、官報に掲載され公告されます。
公告から2週間以内に債権者から異議が出されなければ、認可が確定することになります。
これ以降、再生計画に従って、債権者へ返済をしていきます。

返済が滞ったり、何回も遅れたりすると、再生計画が取り消され、元の債務を全額支払う義務が復活する場合もあります。
任意売却を考える際に、個人再生の方がいいのかもしれないと悩む方は少なくありません。
「任意売却は自宅を失うが、個人再生なら自宅を手放さくていい」という話を聞き、「それならば任意売却よりも個人再生?」と迷ってしまうようです。
本当に任意売却よりも個人再生の方を選択すべきなのでしょうか。

個人再生住宅ローン以外の債務を大幅に減額してもらえるし、自宅を失うこともないので、任意売却よりもよいと考えてしまうのでしょう。
個人再生で減額されるのは住宅ローン以外の債務だけであり、住宅ローンはそれまで通りの返済を続け、完済まで払い続けなくてはいけないのです。
その上で、減額されたとはいえ、住宅ローン以外の債務も支払っていくことになります。

さらに、個人再生をご自分でするには裁判所に納める費用が多くかかりますし、手続きが複雑で、手続きの進め方を誤ると破産処理へ強制的に移行することもあります。
そもそも、住宅ローンを含めて、債務の返済が厳しくなってきたから任意売却や個人再生を考えたはずです。個人再生をして支払う金額を減らすことができても、入ってくる金額が改善されたわけではありません。
個人再生をしたが、それでも支払いができないとなれば、自己破産するしかなくなってしまいます。そうなると、自宅を守るために個人再生を選択したのに自宅を手放すことになり、それも任意売却よりも低い価格で売るしかありません。

個人再生手続きの費用や個人再生後に返済したお金も無駄になってしまいます。
これでは個人再生は自己破産を先送りしているというだけではなく、より多くの物を失ったということになります。
任意売却であれば、住宅ローンを減らすことができますし、自宅に住み続ける方法もあるのです。

個人再生のデメリットは?

任意売却よりもメリットがあるような個人再生ですが、デメリットについても確認しておきましょう。

1.収入がなければ個人再生できない

個人再生は、住宅ローン以外の債務が大幅に圧縮される可能性があり、債務金額によって最低弁済額が決まります。その最低弁済額を、原則3年で完済することを約束する制度です。ですから、自己破産とは違い、返済する必要があるということは、収入がない場合は個人再生手続きをすることはできません。
「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあり」(民事再生法第13章第1節第221条)、「給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれるもの」(同法同章第2節第239条)と規定されています。
したがって、失業中の方は、個人再生手続きが認められることは困難です。ただし、正社員である必要はなく、アルバイトやパートでも認められることがあります。

2.家族であっても返済できない

個人再生手続きでは、住宅ローンを除いた、5,000万円以下のすべての借金を対象とします。銀行や信用金庫などの金融機関、消費者金融、クレジット会社などからの債務だけではなく、両親、きょうだい、親族、恋人、知人、友人などからの借金のすべてが圧縮の対象となります。
ところが、個人再生を申請する人の中には、せめて両親やきょうだいなど近い関係の人には全額返済したいと考える人が少なくありません。しかし、個人再生の制度上、そのように債権者を選んで返済するようなことはできないことになっています。

3.ブラックリストに掲載される

個人再生をおこなうと、いわゆる「ブラックリスト」に掲載されることになります。すなわち信用情報機関に「事故情報」が登録されることになり、通常5~10年程度、通常の借り入れや、住宅ローン・自動車ローン、クレジットカードなどの契約ができなくなります。

4.官報に掲載される

個人再生手続きの過程では、国が発行している官報に、住所と氏名が合計3回掲載されます。官報に掲載されるといっても、一般の人は官報を目にする機会はありませんので、近所や知人に個人再生のことを知られてしまうことはほとんど心配いらないと思います。
しかし、金融業者などが官報の情報を基に融資の勧誘をしてくることがあります。悪徳業者であることも考えられますので、気に留めておく必要はあります。

5.手続きが複雑、時間と費用もかかる

個人再生手続きは裁判所に申立てをすることになるので、手続きや書式が厳格であり、決定までに時間がかかる傾向があります。個人再生は再生計画を立案することが求められますが、裁判所や債権者が認める再生計画を作成する必要があるため時間がかかります。個人再生手続きには手数料等もかかりますし、裁判所が個人再生委員を選任する場合には報酬も用意しなくてはいけません。
任意売却や自己破産などと比べると、個人再生が費用面では最もかかるかもしれません。難易度という点でも個人再生は難しいため、弁護士報酬も割高に設定されている法律事務所が多いということがあります。

他のデメリットは

・5,000万円を超える債務に関しては個人再生手続きはできない
・保証人に請求が行く
・再生計画が許可された後、返済が滞ると取り消しされることがあります。
このようなことが考えられます。

認可されるケースと不認可されるケースの違いは?

個人再生の手続の開始にあたっては、開始要件を備えている必要があります。そして、開始要件を備えている場合、次に、債務者によって作成される再生計画が裁判所によって認可される必要があります。再生計画が裁判所によって認可されれば、再生計画通りに債権者に債務返済を行うことになります。

再生計画が認可されるためには、開始要件を具備しているということに加え、認可要件を満たしていることが必要とされています。個人再生の認可については、一定の要件を満たす場合に認可決定されるのではなく、不認可事由がある場合に、不認可を決定するという方法で決められています。
そのため、認可要件を満たしているということは不認可となる事由がないことであるということになります。

民事再生法174条2項は民事再生に共通する不認可事由を定めています。
この事由に該当しない場合に個人再生は認可されます。

不認可となる事由としては、再生手続や再生計画に重大な法律違反があり、その不備を正すことができない場合です。ただし、違反の程度が軽微な時は不認可事由とはみなされません。また、再生計画が遂行される見込みがない場合や、再生計画決議が不正な方法によって成立した場合や、再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反している場合も不認可事由となります。これらの事由の1つにでも当てはまっている場合には再生計画は認可されません。

前述したように個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類があります。

小規模個人再生の場合

小規模個人再生には小規模個人再生に特有の不認可事由もあります。先ほどの民事再生共通の不認可事由に加え、次の小規模個人再生に特有の不認可事由に該当すれば不認可となります。小規模個人再生に特有の不認可事由とは、まず収入要件を満たさない場合です。そして、再生債権総額が5000万円を超えており、最低弁済基準を下回っている場合や、再生債権者の頭数の半数以上か再生債権額の過半数以上の同意がないといった場合には個人再生は認可されません。

給与所得者等再生の場合

そして、給与所得者等再生の再生計画が不認可となる場合には、先ほどの民事再生に共通した不認可事由に当てはまることに加え、再生債務者が給与などの定期的な収入を得ていない場合や、額の変動幅が小さいと見込まれる人に該当しない場合や、再生債権総額が5000万円を超えたり、最低弁済基準を下回っていたり、可処分所得要件を満たさない場合が挙げられます。このような場合には個人再生は認められません。逆に、このような場合に該当しなければ、個人再生は認可されます。

個人再生を行う場合は、裁判所への予納金なども発生します。住宅ローン以外の借入金は減額されますが、住宅ローンは減額されませんので、もし支払えなくなってしまったら自己破産の道を進むことになるといえます。

その場合には、はじめから任意売却を検討してみるという方法もあります。任意売却で売却すると、競売よりもより有利な条件で自宅を売却することができます。単純売却は任意売却の一種で、競売より約1.5倍高い売却額となることもあります。任意売却のやり方によっては、そのまま賃貸契約を結んで住み続けることができる場合もあります。

しかし、個人再生が不認可であった場合には、自宅を手放さなければならなくなる場合もあります。その場合には、競売か任意売却を選択することになるといえます。競売よりも少しでも値段が高くなる可能性のある任意売却には様々なメリットがあるため、任意売却を選択する家の持ち主も多くいます。任意売却を行う時には、前後して自己破産の手続きをとる人も多くいます。

このように、個人再生は、住宅ローン以外の借り入れ金の返済が困難な場合、一部を返済する事で残りの借り入れ金を免除してもらうことができる手続きです。個人再生が認可される場合については法律で具体的に規定されています。

監修者


氏名(資格)
小林 幸与(税理士・弁護士)

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