目次
正確にいうと、個人再生手続とは、個人の債務者について、債務総額(優先権ない無担保債務)が5000万円以下の場合に、債務総額を減額して収入の範囲内で分割返済できるようにした、民事再生法の定める手続です。
個人再生手続には、①小規模個人再生手続と②給与所得者等再生手続の2種類があります。
債務総額が5000万円を超えたら、民事再生法の定める通常再生手続を選択することを検討します。
この手続は、法人(会社など)の外、個人も利用できますが、手続が煩雑で利用しにくい欠点があります。
建物は、単独所有でも共有でもかまいません。その建物に家族や他人を居住させていても、建物床面積の2分の1以上がもっぱら債務者の居住する部分であればよいとされています。
建物(住宅)の敷地は、債務者が所有している必要はなく、借地でもかまいません。但し、土地を所有しているが、建物(住宅)を所有していない場合、住宅資金特別条項は利用できません。
すなわち、以下の債権でなければ利用できません。
①建物(住宅)の建設・購入のための借入資金
②建物(住宅)の改良(増改築・リフォームなど)のための借入資金
③建物(住宅)の敷地の所有権又は借地権を取得するための借入資金
したがって、このような後順位担保権をもつ債権者について、そのような担保権の登記を抹消してもらう交渉が必要となります。抹消してもらえないときは、住宅資金特別条項の利用ができないので、別除権協定の締結交渉に切り替えます。このような交渉は、経験豊富な弁護士でないと対処できません。
これに対し、任意整理では、債権者の同意がなければ支払債務額を減額できないデメリットがあります。
任意整理というのは、法律で定めた手続でなく、個々の債権者との示談交渉だからです。
これに対し、自己破産では、基本的に債務者はその所有する財産を換金処分しなければならないデメリットがあります。換金されたものが、債権者の配当原資になるからです。
したがって、これら債権者に担保権を実行されて、財産(住宅や自動車等)を処分されることのないよう、担保権を有する債権者(別除権者)との事前協議交渉が不可欠となります(なお住宅ローンであれば、Q7の回答にある住宅資金特別条項を利用して解決できます)。
けれども、債務者自らが、このような金融機関と別除権の交渉をすることは極めて困難ですので、実績ある弁護士に相談依頼すべきです。
経験の乏しい士業や不動産業者から、抵当権がある住宅を、任意売却などの安易な解決方法で、借金清算を提案されることがありますので、注意が必要です。
これに対し、自己破産では、浪費・キャンブル等の借金は免責不許可事由に該当しますので、自己破産申立をして、破産開始決定を受けても免責されず、債務を免れない場合があります。
もっとも、抵当権等の担保があるときは、別除権という特別な権利の扱いを受け、担保権実行手続としての競売の続行ができます。
例外として、住宅ローンについての抵当権は、住宅資金特別条項付個人再生申立と同時に競売の中止命令を申立てて、止めることができるというメリットがあります。
融資先の担当者から、住宅ローンを延滞したため、任意売却をするよう言われたり、あるいは競売にされたりした債務者が、当事務所の個人再生申立で助かり、住宅を手放さずに済んでいます。
けれども、それ以外に個人再生したことが記載されるわけでないので(戸籍や住民票などに載るわけではない)ので、他人に個人再生したことを知られることは、ほとんどありません。
個人再生手続を利用したことが勤務先に知られることは、一般的にありませんが、勤務先に借入れがある場合や勤務先が信用情報を利用する業種(金融機関とか警備会社とか)の場合は、知られることがあります。
また、勤務先に個人再生手続をしていることを知られても、そのことを理由に雇用主が解雇することはできません。
また、申立書類の作成・再生計画案の作成・裁判所との対応等で専門的知識が必要であり、債務整理に手馴れた弁護士に依頼された方が確実です。
裁判所からの諸々の手続に関する通知への対応や再生委員又は裁判官との面接への対応に関して、債務者個人だけではとても難しくて適切な対処ができません。経験豊富な弁護士を代理人として、全てに対応してもらえる方が、とても安心できますし、確実に債務整理できます。
なお、この債務総額には、住宅ローン債務や抵当権などの担保付債務、税金等は含まれません。
したがって、例えば、住宅ローンが6000万円あっても、それ以外の債務が4000万円なら、個人再生手続 の利用を検討できます。
①例えば、給与手取約30万円、毎月の生活費が家族4人で約25万円かかる会社員で、再生手続における支払総額が約150万円とされるとき、再生計画に基づく毎月の支払は、150万円÷36回(3年間)=4万1666円となるので、返済できるだけの定期的な収入が見込まれると考えられます。
②パートやアルバイトでも、再生計画の支払総額との関係で、返済可能な定期収入があると認められれば、個人再生手続を利用することが可能です。
但し、過去に利用した個人再生手続が、給与所得者等再生手続である場合、その再生手続の認可から確定した日から7年経過していないと、給与所得者等再生手続が利用できません(小規模再生手続しか利用できません)。
また、破産免責が確定した日から7年間経過していないと、給与所得者等再生手続が利用できません(小規模再生手続しか利用できません)。
以下の債務です。
①所得税・住民税などの税金
②健康保険・年金保険などの保険料、
③罰金・科料・追徴金など、
④抵当権などの担保で回収見込みのある債権、
⑤債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償債務、
⑥故意または重過失により加えた人の生命身体を害する不法行為に基づく損害賠償債務
例えば、重過失による交通事故で他人に重傷を負わせたときの損害賠償債務は、債権者(被害者)の同意ない限り、再生手続きを利用しても、免れないのです。
例えば、債権者がA社B社C社の3社で届出債権総額が計300万円だったとしても、利息制限法所定の利率で引直計算すると計200万円に減額できた場合は、200万円を再 生計画において基準となる債務総額にできます。
①小規模再生手続の場合
(例)基準となる債務総額が500万円の場合最低弁済額は100万円です。破産となったときの予想配当総額が50万円なら、再生計画で支払う総額は100万円だけでいいのですが、予想配当総額が500万円だと、再生計画の支払総額は500万円となります。
したがって、財産のある個人が個人再生手続を利用するメリットは、ほとんどないかもしれません。
けれども、多額債務の一括払を迫られ、財産差押えを受けているような場合は、個人再生手続を利用して、財産処分をせずに分割払で債務の精算をすることができます。
②給与所得者等再生手続の場合
(例)再生計画で基準となる債務総額が800万円の場合、最低弁済額は160万円ですが、可処分所得の2年分に相当する額が300万円になるとすると、破産の場合の予想配当額が200万円でも、再生計画で支払う総額は300万円になるのです。
①基準となる債務総額が100万円未満 基準債務総額
②基準となる債務総額が100万円以上500万円未満 100万円
③基準となる債務総額が500万円以上1500万円未満 基準債務総額の2割
④基準となる債務総額が1500万円以上3000万円以下 300万円
⑤基準となる債務総額が3000万円を超え5000万円以下 基準債務総額の1割
(例)再生計画で支払う総額が100万円の場合、3年間の分割払の計画を策定すると、毎月の支払額は約28,000円にすぎません。再生計画で支払う総額が500万円と高額になれば、5年間の分割払の計画策定が可能なので、毎月の支払額は約84,000円でよいことになります。
*個人再生申立から、再生計画認可確定まで、通常6ヶ月位かかります。
氏名(資格)
小林 幸与(税理士・弁護士)
-コメント-
弁護士法人リーガル東京では、弁護士・税理士・フィナンシャルプランナー・
宅地建物取引主任者の資格を持つ複数の専門家が、相談及び手続処理について対応しております。
解決事例 | 相談員(弁護士)のご紹介 | アクセス |
手続き費用 | お客様の声 | よくある質問 |