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コラム

住宅ローンが払えなくなった時の手段、「競売」と「任意売却」

住宅ローンを組んでマイホームを購入し、さあこれから楽しい生活だと思っていても、不景気なご時世ですから、いきなり会社が倒産、なんていうこともありえる話です。
そういうとき、住宅ローンが残っている場合は家を売却してでも支払いにあてなければなりません。

「競売」(けいばい)とは

住宅ローンを組んで住宅を購入した場合、ローンの返済が完了するまで購入した住宅は住宅ローン会社の担保となっています。
所有者の住宅ローン返済が滞ると住宅ローン会社が裁判所へ申立てを行い、裁判所主導で売却を進める手続のことを「競売」と言います。
住宅の所有者へ売却の意思確認せずに、強制的に売却(競売)が行われます。

「任意売却」(にんいばいきゃく)とは

住宅の所有者が住宅ローン会社の同意を得た上で、住宅の所有者・不動産業者の主導で売却する手続です。

「競売」と「任意売却」のメリット・デメリットは?

「競売」(けいばい)のメリット

① 裁判所主導で手続きが進むため、面倒な交渉が不要

任意売却は、銀行などの抵当債権者、家の購入希望者、連帯保証人など、いろいろな人との交渉が必要です。そのために任意売却専門の業者に頼んだとしても、必ずうまくいくわけではなく、これからの新生活を考えつつ、いろいろな交渉をしていかなければならないということがあります。

その点、競売を選ぶと、そうしたことを別になにもしなくてもいいというメリットはあります。銀行やなんやかんやという指示をすべて無視していれば、競売が進み、終わり、新しいオーナーがやってくるわけです。その間、新生活に向けて仕事をして、借金返済のためにお金を用意しておけばいいという考え方です。

② 競売が終わるまで(半年~一年くらい)住宅に住むことが出来る

競売が終わるまでには、少なくとも半年、長ければ一年近くかかるということもあり、その間はずっと家に住み続けられるというメリットもあります。

③ 自己破産する予定であれば、競売が終わるのを待って、自己破産をすれば、ゼロからのスタートができる

競売後に住宅ローンが完済できずに残債が残りどうしても返済できない場合は、自己破産を検討することになります。
自己破産すると、住宅ローン残債は免責となり返済義務がなくなります。

しかし、連帯保証人がいる状態で自己破産をしてしまうと連帯保証人に返済義務が移りますので注意が必要です。

「競売」(けいばい)のデメリット

① 売却金額が安くなる

早期に物件の売買を行うという性質上、売却価格が市場価格の5~7割程度になると言われています。
金融機関が少しでも早く物件を現金化したいという思惑のためで、競売物件の購入者もそれを見越して割安な物件を探しに来ているので、必然的に決定価格は市場価格よりもかなり安い値段になりやすいのです。

② 住宅ローンの滞納が近所や周囲の人間にバレる可能性がある

競売という性質上一人でも多くの方に告知する必要があるためで、裁判所の掲示板やホームページなどでその情報が開示されます。そのため住所がわかっている相手には自分の住宅ローン滞納がバレてしまうので、人間関係の面でもデメリットになります。

③ 連帯保証人がいる場合、迷惑が掛かる

「任意売却」(にんいばいきゃく)のメリット

① 売却金額が一般的な売却と同等レベルになる

銀行など債権者と、お金を借りた債務者の間に交渉の専門家に入ってもらうことにより、市場価格に近い売却額で物件を売ることができます。
またそれ以外にも金銭的なメリットがあります。たとえば不動産業者への仲介手数料です。これは売買代金から支払われます。

マンションの場合、滞納していた管理費なども同様に売買代金から支払ってもらえますし、住宅に税金滞納処分の差押さえがある時はこれら税金固定資産税や住民税を支払ってもらうこともできます。

② 売却後、新しい家の持ち主との交渉もできる

新しい家主になった人との交渉次第では、あと数ヶ月で子どもが学校を卒業するから、などの事情を聞いてもらう交渉をする余地があるという点も良いところです。家主が、すぐに住むつもりではないという場合などは、一定の家賃を支払うことで続けて一定期間住まわせてもらうなど、物件を売却した後はすぐ引っ越ししなければならない、と決まっているわけでなく、いろいろな点で自由に交渉できます。

② すぐに売れる可能性がある

支払いを延滞しているので、条件次第では早く売れる可能性がある。

③ 近所の人や会社の同僚などにバレにくい

秘密裏に物件を手放すことが出来るという点です。競売の場合にはその性質上不特定多数の方々が閲覧可能な場所で公示がなされます。そうなると近隣の方や場合によっては身内や友人など多くの方に競売の事実が知れ渡ることになります。しかし、任意売却ではあくまで個人と個人の取引なので、不動産関係者を介した極めて非公開的なやり取りで売買を完結させる事ができます。

通常の売却にしか見えませんから、単なる引っ越しに見えるでしょう。

「任意売却」(にんいばいきゃく)のデメリット

① 交渉などの手間が掛かる

任意売却の場合は銀行など債権者とのお金の交渉、購入希望者との交渉、内覧、といったこともしなければなりません。他にも保証人にも話を伝えて交渉しなければならないなど、時間と手間がかかります。
自ら交渉して市場で物件を売り渡す事が出来る方法ですが、成功させるにはいくつかのポイントがあります。まず重要なのが売却までの期間です。通常に家を売るケースと違い、債務超過で手放す際にはほとんどが時間的に切迫している状態です。

そんな中では債権者が時間のかかる任意売却を認めない場合も多く、比較的早く物件を返済に当てられる競売などを求められるケースがあります。第一のポイントはそもそも債権者に認めてもらうところからスタートしなければなりません。次に重要なのが手続きの負担を考慮することです。購入希望者と直接交渉が出来るのは任意売却の大きなメリットですが、折り合わない場合には何人もの購入希望者の対応をしなければなりません。

住宅ローンを滞納して金融機関から「督促状」や「催促状」が届いたらすべきこと

② 時間的な余裕がない

任意売却で時間が掛かってしまった場合、競売せざるを得ない状況になってしまう可能性があります。

③ 任意売却業者選びに左右されてしまう

任意売却業者がうまくやってくれればいいのですが、うまくやってくれない場合は、時間切れで競売になってしまうこともあります。ですから早く動かなければなりません。ですが任意売却なんて一生に一度あるかないかというものですから、任意売却業者探しに基準すら持つことができずに進めることが多くなります。

しかし、どこの業者でもあっても、広告には経験豊富、多数の実績、と書くに決まっていますから、よくわかりません。単にレベルの低い業者ならまだましですが、悪意を持って、より多く債務者から財産をしぼり取ろうとする業者があるというのも実情です。気づけば、手数料ばかりとられて、結局競売にかけられることになってしまったら目も当てられません。ですから、任意売却業者に任せておけばいいだろうという安易な考えではまずいので、時間をかけずに良い業者を選ぶということが求められます。

業者選びに迷ったときは、リーガル東京に相談してください。

住宅ローンを滞納して金融機関から「督促状」や「催促状」が届いたらすべきこと

マイホームは高額な購入資金が必要ですので、現金で全てお支払いできる方は少なく住宅ローンを組むのが一般的です。
しかし長引く不況でボーナスや給与をカットされたり、リストラにあったり住宅ローンの返済が困難になる方がよく見られます。

住宅ローンの返済を滞納すると、住宅ローンを提供した金融機関から督促状や催促状が届きます。
どちらも住宅ローンの返済を催促する通知となりますが、届くタイミングと重みに違いがあります。

催促状が届くケース

まず住宅ローンの返済を滞納したときに届くのが『催促状』です。

1か月滞納すると届くケースがありますが、3か月以上滞納した時に届くことが多いです。

いきなり自宅や勤務先に電話をかけて催促してくると言うことは無く文書として届きます。

もし督促状が届いてしまったら住宅ローンの毎月の返済額が引き落としされている金融機関の口座へ入金しておくと言う対処方法があります。
その他にも住宅ローンを提供した金融機関が指定する口座へ振り込みすると言う対処方法もあります。

督促状が届くケース

どちらの対処方法もとらずに催促状を無視してしまうと、今度は『督促状』が届きます。

督促状には、これ以上住宅ローンの支払いに応じない場合は法的な処置をとりますと言う内容が書かれています。

催促状より督促状の方が重みがあるのです。
住宅ローンを提供している金融機関では保証会社と契約していることが多く、この保証会社に保証料をお支払いする代わりに保証人になって貰っています。
そのため連帯保証人不要で住宅ローンを組める仕組みになっています。

代位弁済予告通知

しかし住宅ローンを滞納してしまい、督促状や催促状が届いても応じないでいると『代位弁済予告通知』が届きます。

この代位弁済予告通知には保証会社が金融機関に住宅ローンの残高を立て替えてお支払いすることを予告する内容が書かれています。
このことを代位弁済と言いますが、もし代位弁済が実施されると金融機関から保証会社へと住宅ローン債権が移ります。
債権が移っても住宅ローンの支払いの義務はまだ残されている状態です。

今度は保証会社が住宅ローンの残高を回収しようとしてきます。

代位弁済予告通知には支払期日が書かれているので、それまでに支払いすることで代位弁済が実施されずに済みます。

1か月分の支払いでも代位弁済を延長してくれることがあります。

期限の利益喪失通知

その代位弁済予告通知にも応じないでいると今度は『期限の利益喪失通知』が届きます。
期限の利益喪失通知には、住宅ローンの残高を全て一括でお支払いして下さいと書かれています。
支払期限は1週間ほどとほとんど猶予が無い状態です。

住宅ローンの返済が困難になるほどの経済状況なのですから、一括支払いを求められても応じられるケースは少ないです。

代位弁済通知

期限の利益の喪失通知の次に代位弁済通知が届きます。

届いた時点で代位弁済は実施されており、一括支払いに応じないと住宅を競売にかけて処分すると言う内容が書かれています。

競売を回避するには住宅ローンの残高に遅延損害金を加えた金額を一括支払いしないといけないです。
基本的に一括支払いですが、交渉により分割支払いに応じてくれる場合がまれにあります。

出来ない場合は今度は担保不動産競売開始決定通知が届き、住宅は競売にかけられて処分され債権者への配当に回されてしまいます。
新聞やインターネットで競売物件として広告されるので、もし知人や近所の方に見られると競売にかけられた事を知られてしまいます。
競売はご本人で何も行動を移さなければ勝手に進んでしまいます。
不動産市場で売却するより安価で処分されることが多いです。
競売が成立したら強制的に立ち退きを迫られてしまいます。

届くタイミングが遅い通知ほど重みが増していきますので、手遅れにならないうちに支払いに応じる事が大切です。

任意売却で自宅を守る方法

住宅ローンを滞納して銀行から通知書が届いた場合でも、自宅を競売にかけずに済む方法は存在しています。
銀行からの通知書や督促状、催告状が届いても諦めず、弁護士に相談するなど、様々な対処法を使って対処してみましょう。

■「任意売却」という方法があります

銀行から住宅ローンなどの融資を受けてローンを払う事を前提にして家を購入している場合には、住宅ローンが支払えない状態となった時に銀行などの金融機関が住宅ローンの契約者の合意に基づいてローンを受けている契約者の住宅を売却する手続の事を「任意売却」または「任意売買」と呼びます。

「任意売却」は住宅ローンが払えない場合に強制的に行われる競売とは違い、比較的一般価格での市場価格で家が取り引きされます。
強制的に行われる競売は市場価格の7割から8割で家が売買される事も珍しくありませんので、「任意売却」は競売と比べてメリットが大きいと言われています。
「任意売却」は債務者、つまり住宅ローンの支払いが滞ってしまっている人と債権者、つまり銀行側との間に弁護士などの仲介者を入れて行われる住宅の一般市場への売却ですので、強制的に行われる競売と違って債務者と債権者双方の意見を弁護士などの仲介者が聞き入れて競売よりも高い価格で家を売却する事が可能となります。

■任意売却で自宅を守るには

「お金を用意出来ず住宅ローンを支払う事が出来ない、でも家は手放さずに住み続けたい。」
住み慣れた自宅に住み続けたい、そう思うのは人として当然の感情であるとも言えます。

しかし、住宅ローンの支払いが滞ってしまった場合には、弁護士に相談して対策を打つなどの手段を講じなければ最長でも6ヶ月以内に自宅は競売にかけられてしまいます。
手段を講じなければ競売の道は避けられませんが、「任意売却」という形で自宅を売却すれば家を守る事が出来ます。

「任意売却」で自宅に住み続ける方法、それは「リースバック」と呼ばれる方法を使って自宅を第三者に売却する方法です。
住宅ローンの支払いが滞った方が自宅を第三者である親族もしくは投資家などに「任意売却」し、その後新たな自宅の所有者となった第三者である親族や投資家からかつての自宅の所有者に自宅を貸し出す、この行為を「リースバック」と呼びます。
「リースバック」がなされた場合には当然前の自宅の所有者に自宅の抵当権は無くなりますが、家賃を新たな自宅の所有者である親族や第三者に支払う事で住み慣れた自宅に住み続ける事が出来るのです。
しかし、「リースバック」はあくまでも一時的な措置方法にしかなりませんので、「リースバック」を行って何年か先には自宅の前の所有者が再び自宅を第三者から再度購入する必要があります。
自宅を再購入出来ない場合には、自宅の新たな所有者である第三者との話し合いなどが行われ、自宅を売却する事となります。

リースバックとは何?わかりやすく仕組み・メリット・デメリットを解説

■任意売却は弁護士に相談

「任意売却」を行って自宅に住み続ける「リースバック」の手続を行う為には様々な権利書や契約書に目を通して売却を進めていく必要が出てきます。
これらの「任意売却」に伴う手続は一般の方でも出来ない事はありませんが、煩雑で難しい手続も多く、通常ではまず一般人の方が一人で「任意売却」の手続を進めていくのは事実上不可能とも言えます。
「任意売却」をして自宅を第三者に売却する際には、住宅問題に強い法律のプロである弁護士に「任意売却」を依頼される事をおすすめします。

競売が始まった後でも任意売却できるの?

競売という手法は債務者にとって非常にデメリットが多い手法です。

早期に物件の売買を行うという性質上、競売では買取価格が大幅に市場の相場よりもディスカウントされ、またその代金は全て住宅ローンの返済に当てられるのです。
そのためせっかく物件を手放してもローンだけが残り、引っ越し費用などでさらに新たな出費が重なるという再出発とは程遠いという事につながることがあります。

そうした中、多くの方が望むのは『任意売却』と呼ばれる手法で、景気停滞期には弁護士に多くの相談が寄せられます。
これは債権を持つ金融機関や債権回収業者の許可を得ることで、抵当権が設定されている物件を市場で売買出来るという方法です。
競売との一番の違いはこの市場で売買出来るという点で、状態が良くタイミングが合えば住宅ローンの完済だけでなく引っ越し費用の捻出も十分可能な魅力的な方法です。

しかし、前述の通り債権回収業者は早期での回収を望むので、任意売却が行えるかは弁護士などを介した交渉で決定します。
運良く交渉がまとまり、任意売却が可能になったとしても、無期限で気長に待つということではなく、通常6ヶ月間ほどの制限時間が設けられる事が通常です。
6ヶ月と言うと長期に思えるかもしれませんが、賃貸契約のようにスムーズに決まることが少ない任意売却での住宅の販売ではギリギリと言えるほど厳しいデッドラインとなります。

このように弁護士の交渉が成功し任意売却が可能になると、競売後でも開始と平行して購入者探しが可能になるので、リスクはありますが債務者にとっては魅力的な方法になります。

最終的な期日としては、競売が開始され開札日前日という事になりますが、任意売却を成立させるにはこの日までに全ての手続を完了させる必要があります。

しかし、ケースによってはこれらの期日を若干緩められる可能性があります。これも弁護士の交渉次第ですが、開札後であっても買受申出人の許可があれば競売の取り下げや期限の延期が可能です。
ですがこれらはあくまで制度上はという話なので、債権回収業者は大きなリスクを避けるために、このような交渉には否定的な立場で望むことがほとんどです。

競売よりも高価格で物件を処理できるなど魅力的なプランが無ければほとんどの場合こうした交渉に応じる事はあるません。
多少の見積もり額の上振れ程度では引越し費用や諸費用を考慮すると競売の方が債権回収業者にとってメリットが多いのも事実です。

このように任意売却では利害の対立する相手と交渉するのは一般の方には困難と言わざるを得ず、まして債権回収のプロであるサービサー相手では泣く泣く競売を余儀なくされるというケースも珍しくはありません。

やはりこうした交渉では弁護士など法律のプロに依頼するほうが望ましく、お互いの利害を調整できる仲介役として無くてはならない存在です。もちろん弁護士に依頼するということは、さらなる費用負担となるので債務整理の最中には特にためらってしまう方が多いでしょう。

しかし、結果的にはそうした諸費用を大きく上回るほどのメリットがある場合もよくあることなので、ぜひ諦めずにプロである弁護士に相談して下さい。法律事務所によっては弁護士による無料の法律相談を行っている所も多数あるので、ぜひそうした機会を活用し、後悔の無い債務整理を行ってください。

監修者


氏名(資格)
小林 幸与(税理士・弁護士)

-コメント-
弁護士法人リーガル東京は弁護士・税理士などの専門家集団です。当法律事務所に相談依頼するだけで、購入先紹介・売買契約締結交渉・残債務整理・登記手続・税務申告のワンストップサービスを比較的低額の料金でご提供致します。

任意売却とは?わかりやすく解説|競売・通常売却との違いも

住宅ローンは一般的に30年以上の借入期間で金融機関と契約する方が多く、長期的な返済を行う必要があります。しかし、不況や新型コロナウィルスなどの社会情勢の変化により、失業・転職などを経験する人も少なくありません。やむを得ない事情で任意売却を選択する人もいます。

そこで、この記事では任意売却とは一体どんな手続きで、競売とはどう異なるのか、わかりやすく解説します。住宅ローンの返済に悩んでいる方は、ぜひご一読ください。

任意売却とは

任意売却とは、住宅ローンなどの融資を受けている人と、その人が借り入れしている金融機関(債権者)とが合意することにより、住宅ローン(融資)の返済が困難になった建物を売却する手続きです。住宅ローンは長期的な返済を要するため、返済の途中で病気や収入の減少などの事情で返済が難しくなることは珍しくありません。

住宅ローンが返済できなくなった場合、滞納が長引くと担保にしていた不動産が差し押えられます。そして、裁判所の管理の下で競売する申し立てが行われます。競売市場で売却されると、その建物は落札した人のものになり、落札されたお金は債務の返済に充当されます。

住宅ローンを滞納してしまい、競売で落札されてしまうと、住まいを失う上に残債も残っていれば自己破産せざるを得ない可能性が高まります。任意売却はそうなる前に打てる対策方法なのです。

任意売却と競売の違い

任意売却と競売の違いとは、一体どんな点なのでしょうか。4つの項目を挙げて、違いを紹介します。

違い1 売却金額と残債金額

任意売却は、不動産相場に近い金額で建物の売却ができることが多く、残債に充当できる金額も大きくなります任意売却なら住宅ローンの残債が小さくなります。

競売の場合、一般的には不動産相場の7割程度でしか売れないと言われており、残債に充当しても高額の残債が残ります。競売後もローンの返済をせざるを得なくなり、自己破産の可能性が高まります。

違い2 残債の返済方法

任意売却は、残債の返済方法について、金融機関や保証会社に交渉ができます。任意売却後はゆとりのある返済が許可されることが多く、生活が再建しやすいでしょう。

住宅ローンの残債があると分割返済ができる場合もありますが、一括返済を求められる事も多く、返済交渉が難しい傾向があります。

違い3 周囲に知られるリスク

周囲に知られるリスクは競売の方が高くなります。競売の申立てが行われると、裁判所の職員による現地調査が行われ、競売対象物件の情報公開を行います。不動産業者が現地の物件を見に来るなどの事態も避けられず、周囲に競売が知られる可能性は高くなります。

一方、任意売却は裁判所を介さない手続きのため、競売物件情報として公開されたり、現地調査を受けたりすることもありません。不動産の売買情報としてサイトに載ることはありますが、競売よりも周囲に知られるリスクは低いと言えるでしょう。

違い4 退去や引っ越し関連

任意売却は金融機関や保証会社にさまざまな交渉を行うことができ、交渉次第で引っ越し費用を売却代金から受け取ることができたり、退去予定日を決めたりすることができます。柔軟に対応してもらえるので、次の住居先にすぐに引っ越さなくてはいけないなどの負担が減らせるのです。

一方の競売の場合、引っ越し費用を競売による売却代金から受け取ることはできません。落札者が早期退去を求めて引っ越し代金を支払ってくれるケースは少なく、退去に関しても引渡命令が行われており、従わなければ強制退去が行われています。

このように、任意売却と競売には大きな違いがあります。返済に行き詰まってしまうと競売まで何もできないと諦めてしまう人もいますが、競売と比較するとメリットが大きい任意売却を目指しましょう。

任意売却と通常の不動産売却との違い

では、任意売却は通常の不動産売却とどう違うのでしょうか。通常の不動産売買との違いは、以下の2点です。

1.債権者の同意

任意売却は住宅ローンの残債があり、抵当権も残っている状態の建物を売却するため、債権者である金融機関や保証会社の同意を得る必要があります。許可が下りなければ売却することはできません。
通常の不動産売買はアンダーローンなので所有者の意思で自由に売却できますが、抵当権を持つ債権者との連絡などは必要です。

2.売却価格

通常の不動産売買の場合、所有者が納得した金額で売却することができます。しかし、任意売却の場合は先に述べたように、債権者の同意の下で売却を進める必要があります。金融機関や保証会社が納得できる売却価格でなければ、同意が得られにくいのです。

金融機関や保証会社としては、より高く売却させ、住宅ローンの返済に充当させたいと考えています。そのため、売却価格も債務者である所有者や仲介する不動産会社が自由に決めることはできません。

任意売却を検討した方がいいケース

住宅ローンの返済に行き詰まってしまった場合、多くの方々がその他の金融機関から借り入れをし、何とか返済しようと苦労を重ねてしまいます。
そこで、この章では任意売却を検討した方がよいケースを紹介します。

ケース1 収入が減少し、回復の見込みが難しい

勤務先の倒産や収入の大幅な減少などで、返済に必要なお金が捻出できず、回復の見込みが難しい場合は任意売却を検討しましょう。病気などのやむを得ない事情で、転職や再就職が難しい場合も同様です。

ケース2 複数の借入があり債務整理を検討している

住宅ローン以外にも奨学金や消費者金融からの借入などがあり、どの返済にも追われている場合は債務整理を検討する方も多いでしょう。個人再生手続きで債務整理する方法もありますが、生活状況によっては任意売却を検討した方が、生活を再建できる可能性があります。

ケース3 すでに滞納が始まっている

住宅ローンの滞納がすでに始まっており、どのように対処していいかわからない場合は、解決方法の一つとして早期に任意売却を検討されることがおすすめです。

ケース4 離婚や死別などで住まいの処分に悩んでいる

夫婦で支払っていた住宅ローンが、離婚や死別などの事情で返済に悩んでいる場合、任意売却を検討することがおすすめです。

任意売却できないケース

任意売却は競売よりもメリットが多いですが、任意売却ができないケースもあります。
任意売却ができないケースは以下8つが挙げられます。

1.オーバーローンで住宅ローンを延滞していない
2.債権者が認めない
3.任意売却後の残債額が大きい
4.共同名義人・同居人の同意が得られない
5.競売開始され、買主を見つける十分な時間がない
6.不動産所有者本人が手続きできない
7.税金の滞納処分を受けている
8.買い手がつかない

任意売却は、すでに住宅ローンの返済が滞納している時に使える方法です。現在返済が苦しい状態であっても、まだ返済できている場合、損切りを認めてくれないので任意売却はできません。また、不動産を所有している本人が任意売却手続きする必要がありますが、所有者が病気や失踪などで不在であったり、認知症などで意思確認できなかったりする場合には、売却手続きが進められません。(※成年後見人の申立てなどを検討する必要があります)

任意売却できないケースについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
「任意売却ができない8つのケース|任意売却できなかった場合も解説」

任意売却のメリット・デメリット

任意売却のメリット・デメリットを確認しておきましょう。

詳しい解説はこちらの記事をご覧ください。
「任意売却にデメリットはある?メリット・手続きの流れを解説」

1.任意売却のメリット

任意売却は、債権者である金融機関と保証会社や債務者(ローンを借りた方)との間に、交渉の専門家に入ってもらうことにより、競売よりも高く売れます。引っ越し代金などの交渉もできるため、競売より有利です。残債も分割返済の交渉ができます。

新しい家主になった人との交渉次第では、リースバックや転居先のスケジュール交渉もできます。リースバックが認められると、売却後も住宅に住み続けることができ、将来的に買い戻しも可能です。

2.任意売却のデメリット

任意売却はリースバックをしない場合、住まいを失うことになります。転居先を確保する必要がある点では、競売と同じです。また、任意売却は金融機関や保証会社以外にも、連帯債務者や同居人の同意も得る必要があります。

任意売却は競売と比較すると交渉の余地がある分、知識と経験のある専門家に依頼しないと、任意売却が認めてもらえない可能性があります。不動産業者に依頼するケースも見られますが、知識や経験に乏しい業者に任せてしまうと、債権者との交渉決裂も予想されます。

リースバックについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
「任意売却にリースバックを併用して住み続ける|メリット・デメリットを解説」

任意売却の流れ

任意売却を進める場合、どのような流れで行われ、どの程度の期間が必要でしょうか。任意売却は以下7つのステップで進行します。

1.金融機関からの督促
2.弁護士などの専門家へ相談
3.現状の把握
4.債権者との交渉
5.任意売却の開始
6.売買契約締結
7.不動産の引き渡し・引っ越し

任意売却は交渉に時間を要することも多いため、金融機関から督促が始まったらすぐに弁護士へ相談しましょう。

任意売却の流れについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
「任意売却の流れと期間|注意すべき期限も解説」

離婚時に任意売却する場合

任意売却は離婚時に検討される方も多くなっています。住宅ローンの残債がある建物の処分に困ったら、離婚の前段階で方針を決めることが重要です。夫婦のどちらか一方が返済を続けていても、収入の減少などによって滞納してしまうことは多く、離婚後に任意売却や競売に発展することがあります。そうなる前に処分をし、返済計画を作ることが大切です。

離婚後は音信不通になってしまったり、連帯保証人となっている夫婦のいずれかが頑なに拒否したりすることも多いため、離婚前に弁護士に相談しながら任意売却を検討しましょう。

離婚時の任意売却については、こちらの記事で詳しく解説しています。
「【離婚時の任意売却】メリット・デメリット・売却タイミングを解説」

まとめ

任意売却はデメリットがあるものの、競売と比較するとメリットも大きいため、現在住宅ローンの返済に悩んでいる方はご検討されることがおすすめです。

任意売却は債権者との交渉など、実績や経験が求められる手続きです。ぜひ弁護士法人リーガル東京へお問い合わせください。

監修者


氏名(資格)
小林 幸与(税理士・弁護士)

-コメント-
弁護士法人リーガル東京は弁護士・税理士などの専門家集団です。当法律事務所に相談依頼するだけで、購入先紹介・売買契約締結交渉・残債務整理・登記手続・税務申告のワンストップサービスを比較的低額の料金でご提供致します。

任意売却における夫婦間売買とは?ポイント・メリットをわかりやすく解説

夫婦間売買とは

金利が上昇したり、景気低迷が起こると多くの所で悪影響が出てきます。金利上昇は経済の先行指標としてはプラスに働くはずですが、先行指数と現実には乖離があるので、金利が上昇しても景気が向上しないということが多々起こるのです。

そうした悪影響の代表的な例として住宅ローンの滞納があります。変動金利で住宅ローンを組んでいた場合、金利が数パーセント上がると月々の負担額は数万円単位で上がってしまいます。さらに追い打ちをかけるように景気低迷による給与の減少や失業などが重なると、住宅ローンの継続的な返済は難しくなります。

こうした中で住宅ローンの滞納から立ち退きという最悪の流れも起きてくるのですが、子供の進学の理由や仕事の都合、または親の介護の事情など様々な事情により今住んでいる家を離れることは出来ないということもあります。

そうした時に弁護士などが提唱している方法として夫婦間売買というものがあります。これは通常の取り引きではありえないのですが、任意売却で売却する物件を夫婦間で売買しようというものです。

つまり夫名義から妻名義、妻名義から夫名義というように名義の変更を行うだけで任意売却後も同じ物件に住み続けるという方法です。
これは任意売却手続きに入った後でも行うことが可能で、住宅ローン滞納時に同じ物件に住み続けることが出来る最後の手段であると言えます。

任意売却とは抵当権が設定されている物件であっても金融機関の承諾があれば市場での売買が可能になるという制度で、半年ほどの制限期間が設けられている場合がほとんどですが、競売よりも有利な価格で決まることが多いため、債務者にとってメリットの多い手法です。しかし、子供の教育や親の介護など債務者の個人的な事情によっては、どうしても同じ物件に住み続けたいということも起こりえます。

夫婦間売買のメリットは?

住み続けることができる以外のメリット

当然メリットは立ち退きを行わなくても済むということですが、それ以外にもメリットが存在します。それは贈与税を回避出来るという点です。夫婦間の贈与の場合には居住用不動産の贈与の特例を利用することが出来ますが、これは婚姻20年以上という縛りがあるので、全てのご夫婦に利用できる制度ではありません。

しかし任意売却における夫婦間売買ならば、売買代金額が適正価格ならば、贈与税は発生しません。

相続対策となる

こうした非常に大きなメリットがありますが、さらに特殊な例ですがメリットになり得ることもあります。それは相続対策です。

相続には財産だけでなく負債も同時に引き継がなければならないという決まりがあるので、夫側が事業をしている場合には万が一のケースとして莫大な借金が残ることもあります。そうした時に不動産の名義が夫であるならば、不動産を相続する際に負債も同時に相続しなければならないので、最悪の場合不動産を手放さなければならないこともあります。しかし、事前に夫婦間売買を行い名義の変更を行っておけばこのようなトラブルを回避することが可能なのです。

これらはメリットの強調であって全てがこのようにうまくいく事は稀です。先程述べたとおり通常夫婦間であっても財産の移動を行うということは贈与税が発生します。しかし、夫婦間売買を行い贈与税が発生しないというのは、悪質な税逃れであると判断されるケースがあるのです。

その判断基準としては売買価格が適正であるかどうかが重視されます。つまり不動産の価格と実際の売買価格を照らしあわせ、極端な乖離がないと判断される必要があるのです。これによって万が一税逃れであると税務署に指摘されれば、適正価格から売買価格を差し引いた分だけ贈与税を新たにかけられることになります。これは任意売却前に想定していなければ突然の出費となりかなりの痛手となります。

このようにメリットも多い任意売却後の夫婦間売買ですが、十分注意して行わなければ後々大きなトラブルとなってしまいます。可能ならば弁護士など専門家のアドバイスを受けつつ適切な方法で行ってください。

夫婦間売買時のポイント

任意売却自体が専門性の高い手続きですが、夫婦間売却は更にその専門性が増します。任意売却を専門に扱っている業者の中にも、夫婦間の任意売却は無理と初めから取り合わないケースもあるようですが、それだけ乗り越えなけれはいけないハードルがいくつもあるということなのです。

売買資金の調達方法

第一に資金の調達方法です。
親や親族などの金銭的な援助がある場合が最も現実的です。そうした第三者からの資金援助によって、任意売却手続を後に夫婦間売買を行うと先程述べたとおり物件の所有者が移動するだけで同じ物件に住み続けるということが可能になるのです。
しかし、通常夫婦は家計を共にしているので住宅ローンを滞納しているという事は双方の経済状況が悪化していると考えるのが普通です。
住宅ローン残債を一括で返済できるということはあまりあり得ません。そのためほとんどの場合には現金で住宅の夫婦間売買の資金を用意できず、再び金融機関で住宅ローンの借入を行うことになります。
そうなると、夫婦間で任意売却をするために金融機関から融資を得る必要があります。しかし、夫婦間では、売買ではなく、贈与や相続という形で行われるのが通常であるため、金融機関は異例な案件には二の足を踏みます。

さらに、住宅ローンの債権者の同意ということも大きな問題になります。債権者の側からすると、今になって夫婦間で任意売却するということを知れば、そもそも住宅ローンを延滞している段階でどうにかすべきだったのではないかという考えを持っても当然です。
それなのに、競売による売却よりも高い金額で売却できる任意売却を夫婦間で行うというのですから納得できない部分が大きいのです。債務者の配偶者は、任意売却の買主として適格ではないと考えるのです。

適正な価格で売買する必要がある

また、夫婦間の不動産売買には融資しないという旨の規定もあるのです。これは、任意売却すると偽って金利の安い住宅ローンを利用したり、本来の目的とは異なる用途に利用されることなどを避けるための規定です。夫婦間などの売却ということになると、不当に高い価格で売買するケースや、逆に不当に低い価格で売買されることなどもあり得ます。

悪質な税逃れがないか税務署が調査に来ることがあります。その時に適正な売買価格であると証明出来なければ贈与税を逃れるためにそのような手法を使ったと考えられるので、大きなトラブルになります。

実績がある専門家に相談しよう

このように夫婦間での任意売却には、いくつもの困難があるので、任意売却の経験が豊富にあり、夫婦間による任意売却の実績がある専門家に依頼することが、夫婦間売却のポイントということになるのです。

任意売却の経験が豊富にあり、夫婦間による任意売却の実績がある専門家であれば、「今の家に住み続ける方法はありませんか?」「どうしてもこの家を手放したくない」という依頼者のために、それまでの経験を活かして夫婦間による任意売却をすることができます。

しかし、必ず自宅を残すことができると約束をすることはできる専門家はいないはずです。それだけ困難の多い手続きだからです。

そのように難しい夫婦間の任意売却において結果を出してきた経験と実績のある専門家に相談することが夫婦間の任意売却を成功させるポイントなのです。

監修者


氏名(資格)
小林 幸与(税理士・弁護士)

-コメント-
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任意売却物件を購入時の注意点とメリット・デメリット

任意売却物件の購入で気をつけること

任意売却物件の購入時の注意点

任意売却とは、家を売りたい人が直接不動産を販売する方法です。不動産業者も中には入りますが、購入者は普通に住宅を購入するように、お客様としてサービスを受けるというわけにはいきません。相手は営利目的で対応をしてくれるお店ではなく、やむを得ず家を手放すこととなった人であるからです。

家を売却するお金は、家の所有者の今後の計画に既に組み込まれています。そのお金でローンを返済したりという事情がありますが、値引き交渉は行えない訳ではありません。

任意売却物件の購入では、相手とのやり取りが何より大切なのです。やり取りの末売主が家を売る、手放すという許可をしてくれなければ、買う側であっても家を手に入れることができません。お金を出す側であっても、ある意味では立場は対等なのです。

業者を利用して不動産を購入するときは、引越しのタイミングから何から、買主で決めることができます。しかし任意売却物件に対しては、自分の都合を押し通すことができません。相手がいる、商売ではない物件購入。その意味を考えて行動する必要があります。

通常の不動産物件購入との違い

任意売却で購入した物件の、普通の不動産物件と違うところは、売り主に瑕疵担保責任がつかないということにあります。

瑕疵担保責任というのは物件購入後もしその家や土地に欠陥が見つかった場合に、売り主が責任をもってそれを排除する、最低限の生活をしていくために必要な修理等が、売り主の負担で行われるシステムのことです。住まなければ気付けない生活の上での支障を、売主が故意に隠して売却したと考えられるため、購入者は損害に対する賠償を要求できます。瑕疵担保責任が存在することにより、見えないところにも一定の品質が保証され、購入者は安心して物件の購入ができます。

しかし売主が債務者となる任意売却の物件には、瑕疵担保の責任が原則存在しません。つまり後から物件に欠陥が見つかっても、自力で取り除くしか方法がないことになります。契約違反だとして、破棄を申し入れることも不可能です。

瑕疵担保責任が発生しないがゆえのトラブルを防ぐためには、購入前によく状態をチェックして、問題が起こらないか気を付けて調べてみるより他ありません。設備が正常に作動するかしっかりと確認をし、可能であれば売主から状況確認の書類などをもらい、物件の状態を十分に把握したうえで購入に臨むことが必須です。

任意売却という手段を通じて購入できる物件は、明確には商品ではありません。同様に前の所有者が存在している中古物件が、不動産業者の確かな商品となるのに対し、任意売却物件に関しては不動産会社は基本的に仲介するだけです。不動産会社のスタンスが違うので、物件の購入もあらゆる意味で異なった面が見えてきます。

不動産業者が売主の場合、中古物件は不完全な状態では滅多に売却されません。欠陥があれば直され、設備の古いものは新しく交換され、元住民がいた痕跡などは見える範囲も見えない範囲も含めて排除されます。ハウスクリーニングが行われて、物件が新品同様の状態にあることも多いです。中古らしい中古物件は、購入者に忌避されてしまうからというのが理由です。物件を売るために、販売する側の人間はできることをします。

しかし任意売却を行う売主は、多くの場合そういった状態の質を高める工夫をする余裕を持っていません。時間的にも金銭的にももはやかけるものがないという状態で、とりあえずローンを返済する目的を満たすため物件を売ります。

結果物件は直前まで人が住んでいた、そのままの姿で受け渡されることにもなります。設備以前に、前の持ち主の荷物が残ることも珍しくありません。商品として整えられた状態での物件購入は、そもそもできないと思っておく方が無難です。

任意売却物件の購入時のメリットとデメリット

日本人のライフスタイルは大きく変わり、今ではその価値観も多様化しています。そんな中で住宅も新築を購入するというよくあるマイホームのスタイルではなく、中古住宅を割安な価格で購入しリノベーションで好きな様式に創り変えるという方法も増えてきました。

そうした中で市場価格よりも割安な価格で物件を購入できると注目されているのが、任意売却物件です。これは住宅ローンの滞納などで競売にかけられる前に、半年ほどの猶予期間を得て市場で販売されている物件です。

購入時のメリット

競売になるとさらに価格が下がってしまうため、物件の所有者も半年の間で処分出来るように割安な価格を打ち出していることが多く、購入者にとってはメリットの大きいものになります。しかし、通常の中古物件とは違い任意売却物件にはいくつか事前に覚悟しておくべきデメリットも存在します。

購入時のデメリット

まずデメリットとして挙げられるのが債権者との交渉です。厳密には物件の所有者は住人ではなく、住宅ローンの債権を持つ金融機関です。そのため最終的な販売価格は真の所有者たる金融機関の承諾が必須となります。

次にデメリットとして多く報告されるものが瑕疵担保責任の有無です。瑕疵担保責任とは中古住宅の売買の際に、住宅の破損や欠陥など買主の気づかないレベルで存在していた場合、その損害賠償を請求できるというものです。

この瑕疵担保責任は場合によっては契約破棄も可能なほど強く買主の権利を守るものですが、任意売却物件の場合には瑕疵担保責任を認めるケースが多いため物件を購入後に何か欠陥や重大な問題が見つかったとしても、買主が自費でその負担をカバーする必要があるのです。これは住宅の購入など高額な買い物ではかなりリスキーな選択であると言えるので、任意売却物件をためらう大きなデメリットとなります。

また通常の市場取引では最低基準価格も最高限度額も存在せず、購入者と売却者の交渉次第で価格は自由に揺れ動きます。しかし、任意売却の場合には債権者である金融機関が定めた基本売買額以下での交渉は出来ないので、交渉により価格を下げるという通常の物件取り引きのような考え方はあまり適用できないということになります。

また普通の中古物件では考えられないことですが、任意売却物件では引き渡し期限や取り引きの期間などが厳密で非常にハードなため、全居住者の残置物がある場合があります。これらの処理も新たな居住者である買主が行うことになりますが、処分方法などしっかりと確認しておかなければ後々大きなトラブルにも繋がります。

その他にも細かな点でのデメリットも多々あります。任意売却物件の場合ほとんどのケースで補修など通常の中古物件のレベルでは行われていません。普通は物件の価値を高めるために基本的なリフォームや補修などが完了した物件が多いのですが、当然住宅ローンを滞納しているという前提のため、そのような完璧な整備は期待できません。

また個々のケースにかなり依存しますが、任意売却物件の場合売主は少しでも住宅ローンの残高を減らすべく有利な立場での交渉を狙います。そのため通常の市場価格と同程度で物件の売値を提示されることもあるのですが、それならば始めからリスクの高い任意売却物件を購入する必要はありません。そのためお互いに譲歩と意見の提示を繰り返しながら粘り強く交渉を進めていくということになるのですが、かなり人間性の現れる所なので、負担に思われる方は通常の中古物件を選ぶほうがデメリットを回避出来る方法であると言えます。

監修者


氏名(資格)
小林 幸与(税理士・弁護士)

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